北九州市小倉南区長行の動物病院 猫待合ペットホテル完備

北九州市小倉南区長行東1-9-7 長行ビル 102

093-451-1662

院長ブログ

院長ブログ

【獣医師が解説】犬の熱中症とは?症状・応急処置・家庭でできる予防法

2025.6.30

こんにちは!院長の廣瀬です。

暑くなる季節、特に注意が必要なのが 犬の熱中症 です。

命に関わる危険な状態であるにもかかわらず、初期症状を見逃してしまう飼い主様も少なくありません。

本記事では、

✅ 熱中症の原因と症状

✅ 応急処置の方法

✅ 家庭でできる予防策

について、獣医師の視点からわかりやすく解説します。

犬の熱中症とは?なぜ起きるのか

犬は人と違い、汗腺が足の裏にしかありません。そのため、体温調節が非常に苦手です。

特に真夏の高温多湿の環境では、

  • 暑い部屋の中
  • 車内への置き去り
  • 日中の散歩中
  • などで簡単に体温が上昇し、熱中症を発症してしまいます。過去には、電車で移動中に、うるさく吠えるからという理由で、タオルでぐるぐる巻きにして、熱中症を引き起こした子が来院したこともあります。

    主な症状と進行段階

    熱中症の初期症状を見逃すと、数時間以内に重篤な状態に陥ることがあります。

    以下の症状が見られたら、すぐに対処・受診が必要です。

    初期症状;激しいパンティング、よだれ

    • 激しいパンティング(ハァハァという呼吸)
    • よだれが多くなる
    • 体が熱い(特に耳やお腹)
    • 元気がない、ぐったりしている

    中等度;ぐったり、立てない、嘔吐、下痢

    • 嘔吐・下痢(消化器症状の出現)
    • 心拍数が非常に高くなる
    • 呼吸が荒く、体がぐったりする
    • 立てない・呼びかけに反応が薄い
    • 📌 この段階で、すぐに動物病院へ連絡し応急処置を行ってください。

    重度;意識混濁、けいれん、虚脱

    • 倒れ込み・全身の脱力
    • 全身であえぐように息をしている
    • 舌や歯ぐきが紫色になる
    • 意識障害・けいれん・血混じりの嘔吐や下痢
    • 📌 命の危険が非常に高いため、一刻も早く動物病院で緊急治療を!

    自宅でできる応急処置

    症状が見られたら、すぐに動物病院に連れて行くことが最優先です。

    病院に向かうまでの間にできる応急処置は以下の通りです。

    ✅ 応急処置のステップ

    1. 涼しい場所に移動(風通しの良い室内など)
    2. 【扇風機+濡れたタオル】や冷房で体を冷やす
    3. 冷たいタオルや保冷剤を首・わき・内股に当てる
    4. 水が飲める場合は冷たい水を少しずつ与える
      (無理に飲ませないでください)

       ※扇風機だけでは、冷えません。濡れたタオルをかけてから扇風機で当てて、体温を冷やします。

    🚫 NG行為

    • 氷水に全身を浸す
    • 体を急激に冷やしすぎる(逆にショックを起こす恐れ)

    家庭でできる熱中症の予防法

    1. 室内の温度管理

    • エアコンの使用(25〜27℃が目安)
    • 扇風機と併用して空気を循環させましょう

    2. 新鮮な水をいつでも飲めるように

    • 水皿を複数設置
    • 外出時もペットボトルに水を準備

    3. クールマットや冷感ベッドの活用

    • ペット用ひんやりグッズも効果的です

    4. 長い毛の子はサマーカットも有効!

    5. 留守番時は要注意!

    • エアコン切れや停電に備えて対策を

    熱中症になりやすい犬の特徴

    以下の犬種・条件の子は特に注意が必要です。

    • 短頭種(フレンチブルドッグ、パグ、シーズーなど)
    • 寒冷地出身、毛が厚い犬種(G.レトリーバー、ポメラニアンなど)
    • 短足の犬
    • 黒い毛色の犬
    • 高齢犬・持病のある犬
    • 子犬・肥満気味の犬

    これらの犬は呼吸機能や体温調節が弱く、熱中症リスクが高まります。

    夏のお散歩で気をつけること

    • 朝早く or 夕方遅く(地面の温度もチェック)
    • アスファルトは手の甲で3秒触って熱ければNG
    • 無理な運動は避け、水をこまめに与える
    • ペット用ひんやりグッズを活用

    まとめ

    熱中症は、昨日まではピンピンしていたのに「気づいたときには手遅れ」ということもある命に関わる病気です。

    しかし、日常のちょっとした工夫や観察で、未然に防ぐことが可能です。

    もしも気になる症状があれば、自己判断せず、すぐに動物病院へご相談ください。

    当院でも熱中症の診療や予防相談を随時受け付けておりますので、お気軽にご相談くださいね。

    室内飼育での熱中症対策【チェックリスト】

    ✅ 室温は25~28℃を保つ(エアコン+扇風機の併用が効果的)

    ✅ 外出時もエアコンをつけたままにする

    ✅ ペット用の冷却マットや濡れタオルを寝床に設置

    ✅ 新鮮な水を常に飲めるよう、水飲み場を複数用意

    ✅ 水はこまめに交換し、冷たく清潔な状態を保つ

    屋外飼育での熱中症対策【チェックリスト】

    ✅ 犬小屋は日陰で風通しの良い場所に設置

    ✅ 日陰がなくなる時間帯にはよしずや遮光ネットで人工的な影を作る

    ✅ 地面の熱対策に、犬舎の下に木製スノコを敷く

    ✅ 水入れにはたっぷりの冷たい水+大きめの氷を入れて温度キープ

    ✅ 朝昼晩、なるべくこまめに水を交換する

    ✅ 犬舎に【小型扇風機+凍らせたペットボトル】や冷却マットを設置する

    ✅ 水遊びが好きな子には、浅めのプールやホースで水浴びもOK。※1

    ✅ 暑い時間帯は可能なら室内(または玄関など涼しい場所)に避難

    ✅ 長毛の犬は定期的なブラッシングやトリミングで毛を短くカットすることで通気性を確保し熱こもりを防ぐ

    ※1:耳に水が入らないように注意しましょう。外耳炎の一因になります。

    参考文献

    • 大角真里, 他. (2021). 小動物の熱中症. 日本獣医師会雑誌, 74(3), 157-164.
    • 松村真由美. (2022). 犬の熱中症予防に関する考察. 動物臨床医学会年次大会プロシーディング, 43, 122-125.
    • American Veterinary Medical Association (AVMA). “Heatstroke in Pets”. https://www.avma.org